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Interview Cogism 1 ambula map 観光の「今」と「これから」。―ポイントを絞った観光戦略で街の魅力を広く伝える―

コギトが2018年7月にリリースした地図アプリ「ambula map」は、GPSの埋め込まれたイラストマップ上を散策感覚で操作できる、いわゆる“まち歩き応援アプリ”だ。これにいち早く賛同し、魅力あふれる地元のイラストマップを提供してくださった西宮観光協会の皆さんに、地図制作の極意と観光に寄せる思いを伺った。

上野八郎 株式会社コギト 営業本部社員 臼井伸介 株式会社コギト 取締役営業本部本部長 前川英三 様 西宮観光協会事務局長、日本盛株式会社元常務取締役、フレンテ西宮(西宮都市管理株式会社)取締役会長。 吉岡秀孝 様 西宮観光協会観光アドバイザー、日本盛煉瓦館元支配人。西宮の酒を取り扱う飲食店を掲載した「地元『西宮』の日本酒が味わえるお店100軒」をはじめ、主に地酒に特化した観光戦略を行う。 大野穣一 様 西宮観光協会事業課長。「ぶらっとウォーク西宮探訪MAP」をはじめ、同協会の刊行物の編集・ディレクションを担当。

コギトとの出会い、地図提供の経緯

  • 上野
    上野:
    始めは私が別の商談でフレンテ西宮さん(※1)にお邪魔させていただき、担当の方から前川さんが西宮観光協会の事務局長に就任されると伺ったんですね。私たちもちょうどambula mapをリリースするタイミングでしたので、改めて直接お話する場を設定していただきました。
  • 前川様
    前川様:
    私たちとしても阪神西宮駅に新たな観光案内所をオープンする話が出ていた時期でしたので、それに併せて何かできたらいいなという思いがありました。
  • 上野:
    直接お会いした際、西宮を酒の街として売り出したいと熱く語られる前川さんのお話が大変印象的でした。さらにこのインパクトのある手描き地図。ambula mapのリリースに向けて良質なコンテンツを求めているタイミングでこの地図と出会えたことは、大変ラッキーでした。
    前川様:
    西宮の地図は全部で5種類あり、エリアによって色々と特徴を出しています。ここ阪神西宮は酒蔵、夙川・苦楽園界隈は桜とスイーツ、ほかは甲子園、西宮北口、西宮北部といった具合ですね。阪神西宮の地図はこのあたりの看板にも印刷されていますが、手描きならではの味わいがあると住民の方からも好評をいただいています。
  • 臼井
    臼井:
    私も調査で様々なイラストマップを見てきたのですが、西宮の地図を見た時に「これだ!」と思ったんですよね。一般にまち歩きの地図というと、色んな情報が網羅されていることが多いのですが、結果的にごちゃごちゃしていて伝わりにくい。その点、阪神西宮の地図はスパッと酒樽をアイコンにしていて明確です。もちろん、ほかにも色々と売りはあると思うのですが、一番の売りはこれだとしっかり押し出すことが大事なのだと、逆に教えられた気がしました。
  • 前川様:
    そこまで感じ入られていたとは気づきませんでした。しかしながら、そういう御社の熱意に押されて私たちとしても地図を提供してみようという気持ちになったんです。

際どい、と思うようなアイデアも
積極的にアピールする

  • 大野様
    大野様:
    私は性格が曲がっているので(笑)、一般的な地図はあまり好きではないんですよね。こういった公共の刊行物を作る場合、よくあるのが関係者全員の合意がないと進まないといった話。要望を全部受けようとする姿勢も大事ですが、結果的にポイントがどこなのかわからなくなってしまったら本末転倒です。
  • 上野:
    どこの地域にもメインコンテンツとなり得る「売り」はあると思うんです。ただ、それをどう料理するかで意見がわかれて、ポイントもずれていきがちなんですよね。
    大野様:
    酒蔵の街の地図なのに、地元のバザーや金融機関の情報まで入っていたりとか。まあそこらへんは出資の問題とか、色々と事情があるので難しいところではありますが…。
  • 臼井:
    日本は合議制の採択、というのが社会常識として広まっていますからね。日本人は個性を押し出すのが苦手な部分がありますが、これから2020年の新しい時代に向けて、ちょっと変だと思われるくらいの主張をしていかないと、本当に大切なことを見失ってしまうような気がします。
  • 大野様:
    その点西宮は、わりと自由にやらせてもらえていますね。まちたび(※2)も「何でこの一店舗だけを取り上げられるの」とか、ほかの自治体さんからもよく聞かれるんですけど、市の都市ブランド発信課(※3)もこちらがアイデアを出せば積極的に相談に乗ってくれますしね。
    前川様:
    私が感じているのは、西宮観光協会関係の正規職員たちが全体的に若いということ。柔軟な発想はそういう部分にも理由があるかもしれませんね。我々は例外ですが(笑)。
  • 上野:
    ambula mapも従来のイラストマップの枠にとらわれず、見た方がこれだ、と思えるようなポイントを押さえた情報を掲載していきたいと思っています。

宮水を中心とした観光誘致で観光客倍増を狙う

  • 前川様:
    西宮観光協会では平成28年と比べて観光客を倍増させる目標を掲げています。そのためには色々なことをやらないといけない。
    大野様:
    b to cの観光施策もちゃんと打ち出していかないと、倍増というのは簡単ではないですからね。
    吉岡様
    吉岡様:
    西宮はインバウンドがほとんどゼロに等しい地域なんですよ。年間酒蔵を訪れる人が大体20万人位いるんですが、そのうちの1%にも満たない。そこをどう増やしていくのかは今後の課題だと思っています。一方で、日本の観光客にももっと来てもらいたい。そのためには大型バスの受け入れ体制の整備が必要です。せっかく素晴らしい博物館やアンテナショップがある訳ですから、なんとか大型バスを回遊させられるようにして、酒蔵をめぐる企画を浸透させていきたいです。
  • 臼井:
    イベントが浸透すれば、繰り返し来る人も増えるかもしれませんね。
    吉岡様:
    そこなんですよ。「夏の酒蔵回遊がおもしろかった、じゃあ2月の蔵開きにも来てみようかな」となってほしい。西宮が誇る宮水(※4)、それを中心に観光を展開していくという方向性は絶対に正しいですからね。これを推進していくことで、自然とレストランや喫茶店にもたくさん人が来てくれると思っています。

これからの「ambula map」に期待すること

  • 吉岡様:
    御社からも評価をいただいている西宮の手描き地図ですが、初めてここを訪れる方に、どのルートが効率的に回れるかまでは伝えきれていないので、ambula mapでおすすめコースみたいなものを表示してもらえたらありがたいですね。
    臼井:
    実はその機能もすでに搭載しています。私も実際にこの界隈を歩いてみたのですが、すべてのスポットを回るには大分時間がかかると感じました。せっかくの休日、いい所を集中的に回りたいといった方におすすめのコースを提案できればと思っています。
  • 吉岡様:
    いいコースが複数提案できれば、それもまたリピーター獲得に繋がりますからね。
  • 臼井:
    そうですね、観光客の満足度も高まりますし、物足りなければまた来たくなる。ambula mapでは実際に歩く方をしっかりサポートしていきたいと思っているので、喫茶店などの休憩スポット情報もたくさん掲載していきたいと考えています。
  • 吉岡様:
    紙の地図で喫茶店の情報を見ても、なかなかどういった店なのかまでは伝わりにくい。そんな時に電子データで店の詳しい情報が見られれば、初めての方でも安心ですしね。
    臼井:
    おっしゃる通りです。さらにambula mapにはさまざまな種類のイラストマップを掲載しているため、これまで西宮を訪れることのなかったユーザーにも新たなお出かけ先の一案として街の魅力をアピールすることができます。こんな地図があるんだ、こんなおもしろい場所があったんだ。そんな風に地方にあるいいものを発信する、そのお手伝いができれば幸いです。
  • 前川様:
    そのためには、どんどんアプリで見られるイラストマップが増えていくといいですよね。
    大野様:
    首都圏のアプリユーザーにも西宮のアピールができるんだとすれば、それは非常にありがたいことだと思っています。
    上野:
    ぜひ頑張らせてもらいます。
    臼井:
    今後も機能をブラッシュアップし、より多くのユーザーにアピールできるよう取り組んでいきます。
  • ※1…JR西宮駅を降りてすぐの場所にあるショッピングモール。
  • ※2…西宮の多彩な魅力を凝縮したまち歩きプログラム。
  • ※3…西宮市の産業文化局・産業部に属する組織。
  • ※4…西宮神社の南東側一帯から湧出する、灘五郷の酒造りに欠かせない名水。